法人減税で利益悪化の原因

2011年12月16日

最近新聞などで「法人税が減税になったのに企業の利益は悪化」という文字を見かけます。

これは「繰延税金資産が減るから」という言葉で説明されますが、今回はこれをわかりやすく書いてみようと思います。

繰延税金資産は会計における収益費用と税務における益金損金の違いから生じます。会計上は費用になるが、税務上は損金にならず、かつ、いつかその違いが解消される場合は「繰延税金資産」が計上されます(ここでは単純に「繰延税金資産の回収可能性」はあるとして考えています)。

つまり、この場合、会計のほうが早く費用を計上しているため、税金の前払いとして繰延税金資産が計上されます。

例えば、税引前利益が1000の会社を考えてみましょう(税率は40%とします)。また、この会社は100の退職給付引当金を計上しています。

退職給付引当金は現在、税務上損金にすることができません。退職給付引当金以外に会計と税務の差がないとすれば、税金は(1000+100)×40%で440となります。しかし、退職時には損金を計上できるため、税務上いつか損金とすることはできます。会計上はすでに退職給付引当金を計上しているため、退職時には費用は発生しません。

ここで前払いの税金という考え方を使って、繰延税金資産を計上します。金額は退職給付引当金分の100に40%を乗じた40となります。仕訳としては以下のようなものが追加されます。

(借方)繰延税金資産40(貸方)法人税等調整額40

この法人税等調整額は税額に加減算されるため、実際の税額440から40を引いた400が会計上の「法人税等」として計上されます。この計算の結果、この会社の当期純利益は1000-400=600となります。

この「繰延税金資産」により、「法人税が減税になったのに企業の利益は悪化」という事象が説明できます。

上記の数値例では税率は40%と仮定しています。ではこれが35%になったらどうなるか説明します。

繰延税金資産を計上する根拠となる税効果会計においては繰延税金資産の計上額は「差が解消する年度の税率」に基づいて計算することとなっています。したがって、上で計算した繰延税金資産の金額は100×35%=35となります。その結果、会計上の「法人税等」は440-35=405となり、この会社の当期純利益は1000-405=595となります。当期純利益は5減少しています。

これが「法人税が減税になったのに企業の利益は悪化」している原因です。

かなり省いて書きましたので、読みにくいところがありましたらお詫び申し上げます。



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